コロナ社出版『自動運転』の読者レビューの機会を頂けました🐜
この記事では、もう少し深堀りした内容でレビューしたいと思います。
図表出典元
- 二宮芳樹 編著・武田一哉 編『自動運転』(モビリティイノベーションシリーズ 5),コロナ社(2021)
コロナ社様から許可を頂いて、図表を掲載しております。
総評
以下は、コロナ社に送った私のレビューとほぼ同じ内容です。
本書は自動運転の技術だけでなく、法制度やビジネスモデルなど内容は多岐に渡り、非常に読み応えがある。
取り上げる技術は、センシングや認識、制御などの主要技術だけでなく、従来とは異なる「自動運転ならでは求められるHMI」にも焦点を当てている。
なお、技術的内容といっても、自動運転の素養がある者であれば十分理解できるレベルである。
オムニバス形式の講義を聞くイメージに近く、たとえば自動運転をテーマに持つ大学の研究室の輪講や、企業の勉強会の題材に最適である。
また、初版発行年が2021年に対し、引用文献で最も新しいものは2020年であり、本書は最新の技術に基づいてまとめていることがわかる。
エンジニアでなくても自動運転に少しでも関わる人であれば、まず初めに読むことをオススメしたい書籍の1つである。
良かった点
上記以外で良かった点を3つ挙げます。
センサ比較
自動運転では、RGBカメラなど多種多様なセンサを必要としますが、それぞれのセンサの特性は専門家でないとわからない部分があります。
本書では、たとえば以下のように各センサの仕様と特性がまとめられており、使い分けがある程度想像できるようになっています。
また、運転支援を含む自動運転システムに求められる具体的な位置精度の記述もありました。
自動運転の法制度
本書では、9章にて法制度の章が設けられており、主に自動運転が実現した場合における、現行の法律の課題が述べられています。
国土交通省は、国内でのレベル3相当の自動運転実現に向けて、2020年4月に改正法が施行(令和元年法律第14号)されましたが、その内容が9.3.3国内法規(初版219頁)にて、少しですが言及されています。
法制度まで網羅している書籍はなかなかないと思うので、貴重だなと思いました。
ビジネスモデル
近年はどの産業でも、これまでの「モノ売り」から、「コト売り」ビジネスへの変革が叫ばれています。
自動車業界も例外ではなく、本書では自動運転が実現した場合、従来の「売り切り」ビジネスから、「オンライン」ビジネスへの移行を指摘しています。
上記の図を見ると、ビジネスモデルの大きな変化が予想されており、モノ売りに特化した既存の自動車メーカがどのように対応していくのか興味深いと感じました。
さらに知りたくなった点
本書を読んでいて、さらに知りたくなった点を1つ挙げます。
各社の比較
たとえばテスラは、LiDARを搭載していないこと(Why Tesla Won’t Use LIDAR, towards data science)が有名ですが、センサだけでなく、自動車メーカの自動運転技術(運転支援含む)の比較があればもっと良かったなと思います。
とはいえ、2021年1月時点で日本でレベル3認定を受けたのは、ホンダのレジェンドだけ1なので、ベンチマークしようにも難しいですよね。
- Honda プレスリリース|自動運転レベル3 型式指定を国土交通省から取得
2020年度内の発売を予定しているとありますが、2021年1月時点ではまだ発売されていないようです。
おわりに
今回初めて読者モニタに応募しました。当選するとは思わなかったので、張り切って読んでしまいました。
自動車業界を辞めて数年経ちましたが、もともとロボット工学を専攻していたので懐かしい技術もあり、楽しく年末年始を過ごすことができました。(実家でずっと読んでたw)
参考になれば幸いです(^^)
-
アウディは世界で初めてレベル3相当の自動運転車を発表しましたが、2021年1月時点では日本では発売されていません。↩