ari23の研究ノート

メーカ勤務エンジニアの技術ブログです

新規事業開発失敗談|研究者・技術者目線

以下の記事では、『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」戦略 なぜ、御社の新規事業は大きくならないのか?』を読んだ感想と、ちょっとだけ私の経験に触れました。

『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」戦略』を読んだ感想 - ari23の研究ノート

そこで今回は、もう少し踏み込んで、新規事業開発に関する私の失敗談を書きたいと思います🐜
機密情報には一切触れないよう書いているため、具体性に欠けますが、ご了承くださいm(__)m
あと、けっこう愚痴ばっかりで、暗い話になっちゃいました。すみません。

当時の状況

当時の私は企業の研究所に配属され、主なミッションは「新規事業の核となる技術開発」でした。

大事なのは、「新規事業」の部分です。新規事業開発の方法には、技術からのアプローチ「シーズアウト」(プロダクトアウト)と、現場からのアプローチ「ニーズイン」(マーケットイン)がありますが、配属された研究所では研究員といえども、ニーズインのアプローチが求められました。

「研究員なのに、現場に行ってニーズ探してこいって、人材の無駄遣いじゃない?じゃあ、現場に詳しいはずの事業部は何してるの?」という意見は当然ありましたが、私自身は学生時代の研究がニーズから入った内容だったこともあり、抵抗感はありませんでした。

ただ、評価の際に、新規事業の技術開発している自分より、既存事業の技術開発している同期の方が、明らかに優遇されていたのはかなり残念でした。 役員は口を揃えて、「担当業務のフェーズで評価は変わらない、学会発表を重視する」と言っていましたが、既存事業業務の方がプレスリリースはよく出ますし、単純に売上も出ているので、やっぱり派手に見えていて、それは評価にも影響出てました。1 2

文句は尽きないですが、そういった中で私は2つのPjで新規事業開発をして、そのどちらも事業化に至らず、失敗してしまいました。

Case1|スピード感の不足

最初のPjでは、「新規事業のコア技術は開発できたが、その頃には声を掛けていた他社が興味を失っていた」結果、頓挫してしまいました。

このPjでの反省点は、すべてにおいてとにかく遅かったことだと思っています。

特に役員の判断が遅いのが残念でした。 どんなに多くの現場の、いわゆる生の情報を収集して説明しても、「Goを出すラインまで来ていない」と言われ続けました。そして技術開発も満足に進められず、そうこうしているうちに役員が交代して、また最初から話をすることになり、時間だけがいたずらに過ぎていきました。

今思えば、前回の記事で書いたように、役員もどうやって決めたらいいのかわかんなかったんだろうなぁと推測します。

それでも、なんとかコア技術を開発するところまで至りましたが、その頃には声を掛けていた他社の情勢も変わってしまいました。社内外含めてそれまで頼りにしていた方々の殆どが、自分たちの周りからいなくなってしまいました。
(しかも、そのうちの1社は、我々が開発したものとそっくりなものを作って、何食わぬ顔でプレスリリースしてました。色々考え方ありますけど、せめて声掛けくらいはしてほしかったです。Pjのトップはカンカンに怒ってました。3 4

開発した技術だけでもなんとか売れないだろうかと、いろんな企業に営業しましたが、当然見向きもされず、結局お蔵入りでチーム解散となりました。

この技術開発は、チーム結成初期からメインテーマとして全員で取り組んでいたもので、数年かけてもうまくいかなかったものでした。しかし、私がメインで開発するようになって、やっと完成した技術でした。

私にとっては、なんとか企業研究者としてやっていけるかも、と自信がついた思い入れのある技術でしたが、残念ながら日の目を見ることはありませんでした。

Case2|テーマ選定の不備とコミュニケーション不足

次のPjでは、「テーマ選定の不備と、Pjメンバのコミュニケーション不足」により、頓挫してしまいました。

このPjでは、テーマ探索は事業部の総合職の方々が行い、そのテーマに合う技術を研究所の技術職(研究員)が開発するというような体制で取り組んでいました。

冒頭で「研究員がテーマ探索するのは人材の無駄遣い」という意見もあると書きましたが、それは間違いであると私は思います。

事業部主導で進めていたこのPjでは、選定したテーマがそもそも技術で解決すべき課題でなかったり、実証実験をするにしても計画が無茶苦茶であったり、明らかに技術を理解できていないものでした。
したがって、新規事業開発では、テーマ探索フェーズから技術に明るい人間が必ず入るべきだと私は考えます。

また、根幹である選定テーマが貧弱であることに加えて、当時私が総合職からしょっちゅう言われていたのは、こんなことでした。

  • 「こんなにお金かけて実験してるのに、なんで技術が完成しないんだ!」
    →いや、そもそも実験のやり方が滅茶苦茶。なんで、こっちに相談せずに勝手に実験始めちゃうのよ。

  • 「こんなに人かけてるのに、なんでうまくいかないんだ」
    →いや、技術職は1人も増えてないし、増えてるのは総合職だけ。しかも、なんで総合職は技術職の5倍の人いるの?総合職からの問い合わせ対応で、技術職の1日が終わっちゃうよ。

  • 「我々の持つ技術がわからない。どうしてこんなことできるんだ?」
    →いや、できるとは一言も言ってない。そっちが勝手にできるって言って、お客さんからお金もらってきちゃって困ってるんだけど。てか、勉強しろ。

  • 「先方からなんとか案件もらって、お金もらえた!分析用のデータはないけど、分析して。」
    →はぁ!?5

こんなことを毎日やっていると、総合職と技術職の仲がすこぶる悪くなり、しまいにはコミュニケーションがなくなります。 そして、さらに混沌としていく負の連鎖に陥ることになりました。

私の感覚では、ここまで悪化すると、仕切り直しの場が設けられると思うのですが、なんと役員には進捗は良好であるというウソの報告が上げられていて、正しい情報は一切共有されない状況でした。

言い訳と反省

Case1, Case2を書いて、「他人のせいにしてるな」と思って、言い訳させてもらいます。あと、ちょっと反省点を書きます。
でも、他人のせいにした言い訳であることには変わりません。

Case1のとき何してたの?

当時の私は新卒で、権限もなく、周りの状況がまったく見えておりませんでした。とにかく、上司に与えられた業務を、なんとか期待以上、給料以上の成果が出せるよう、それだけを頑張ってしました。

でも、もっと早く特許化を進めておけばよかったなぁと、反省しています。そうしていれば、もう少し違った展開になったんじゃないなと今でも妄想しちゃいます。(別件で工数取られてしまって、後回しにしてしまったのが失敗でした。)

後悔はありますが、コア技術ができてチームに報告したとき、メンバー全員がとても喜んでくれたのは、すごく嬉しかったなぁ。6
あと、学会で発表して賞を2つも頂けたのは、今でも誇りに思っています。7 8

Case2のとき何してたの?

このPjに入ったときから、すでにチームは崩壊していました。そして、私はまた一番の下っ端で、権限もありませんでした。

Case1での失敗もあるので自分なりに特に技術面で頑張ったんですが、「技術的に間違ってる!」ってはっきり言っても、「まあまあ」となだめられて、無視されちゃうのです。25人くらいのPj規模で、1人だけ騒いでもただ煙たがられるだけで、結局何も変わらないのはかなり辛いです。

こうなってくると、だんだん「自分が間違ってるのかな」と思い始めて、違うPjの知り合いや同期に相談しました。でも、やっぱりみんな「そんなことはない。お前以外のPjメンバが明らかにおかしい。」って言ってくれるので、当時の指摘は間違ってません。(だって、データないのに分析しろって、ありえないでしょう?

最後の方は、自分の席に座るだけで気持ち悪くなっちゃってて、体調崩しちゃいました。

でも、Pjを正しい方向に導けなかった原因の1つに、私の力不足があるのは認めます。

退職時

以下、話は脱線します。もしかしたら、消しちゃうかも。

結局、Case2のときに私は退職を決意することになります。

最後に所属長と退職面談したんですが、退職理由を話したら、「そんなワガママばっかり言ってたら、他の会社でも君はやっていけない。」と所属長にはっきり言われました。

噂では聞いたことあったんですが、ほんとにそういうこと言う人いるんだなと、なんか逆に新鮮でしたね。

「ワガママですみません。ちなみに、所属長はうちの会社以外で働いたことあるんですか?」と聞いたら、
「ない。でもどこも一緒だよ。だから、君は社会人としてやっていけないよ。」と言われました。

退職面談でこういうこと言う目的って、なんですかね?引き止めたいんじゃないの?辞めさせたいの?

退職後、その会社では大規模リストラやったり、株価暴落したり、若手がたくさん辞めてたりするんですが、そういった情報が流れてくると、元社員として、なんだかやるせない気持ちになります。

じゃあ今はどうしてるの?

これまでの反省点を活かして、今はかなり効率良く進められているんじゃないかと思います。

  • スピード感

    • 現場に近い事業部に所属しているため、研究所よりはハイペースで進めることができています。
    • 知財だけメンバーの意識が低いので、私は年2件の特許出願を目標にしています。
  • テーマ選定/ニーズ探索

    • 現場のヒアリングをしっかりやっていて、非常に優れていると感じているので、問題ないです。
    • 1テーマしかないのはリスク分散の観点で危険なので、私はアングラで複数テーマを持っています。
  • コミュニケーション

    • 志が高い、やる気のあるメンバーが揃っており、報告も透明性があるので、問題ないです。
    • ただし、技術的に間違った方向に進む気配を察知したら、早急に軌道修正しています。
      • とにかく技術に対して不誠実になることだけは、避けたいのです。データがないのに分析とかはありえない。

今のPjは正直競合他社の後追いです。でも、まだ1年も経っていないのに、今の状況にあるのは非常に早いと思っています。
他社よりも優位な技術も開発しつつあるので、将来はけっこう明るいのでは、と思っています。(具体的に書けなくてごめんなさい)

おわりに

全体的にすごーく暗い内容でごめんなさい。

成功の秘訣は本やネットでたくさん出てきますが、失敗談って意外と目にしないと思うので、今回書いてみました。

ネガティブに書いていますが、私自身は失敗そのものをネガティブにとらえてません。だって、新規事業開発なんてとても難しい内容なので、そんな簡単にできるものではないからです。むしろ、たくさん失敗して、次に活かすことが大事。

でも、むやみやたらと失敗するのはつまらないので、できる範囲で確度を上げようと努力しています。宝くじ並かもしれませんが、もし成果出たら、すごく嬉しいじゃないですか!

なので、いま新規事業開発をしている方で、この記事を読んで、成功率が少しでも上がるかもと感じていただけたら、とても嬉しいです。
お互い、頑張りましょう!!!

参考になれば幸いです(^^)


  1. せめて、新規事業と既存事業の業務評価を同一にしてほしかったなぁ。

  2. やっぱり偉い人の、言ってることやってることが違っているのを見ると、従業員はやる気なくします。偉い人たちは気づかないのかなぁ?それとも従業員のことなんて考えてないのかな?

  3. この事件以来、ひとりで不買運動してます。同じ業界の他社の方に聞いたら、「あの会社は昔からそーゆーところ」とコメントいただきました。

  4. でも真似されたってことは、自分たちは世界最先端を走っていたということだと思っています。

  5. 当時下町ロケット観て泣いてた。普段ドラマとか映画観て泣くことないんですが、毎日がツライせいか、すごく感情移入してしまった。Blu-ray買った。

  6. 私含めて数人は退職しちゃいましたが、今でも連絡とったり、飲みに行ったりして、かなり仲良いです^^

  7. 1つの発表で2つ受賞ってすごくない???

  8. 本当は製品化・事業化が一番嬉しいんですけどね。なかなか難しいです。